爆音コンビニ DEAF MART EVENT REPORT

2020年12月4日都内某所 怪しく光る爆音コンビニが開店しました

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため
「マスクの着用」が
新しい生活様式となる中、
「口の動き」や「顔の表情」がわからないことが、
聴覚障害のある人々にとって
新たなコミュニケーションの壁になっています。

そういった問題を体験を通じて知り、
共に考えていくイベント
「爆音コンビニ DEAF-MART」を
開催しました。

おかげさまでイベントは無事成功。
やはり爆音の店内でマスクをしたレジ店員と
お客様の会話は難しく、
聴覚障害のある店員が
お客様をサポートする場面もありました。
同じ目線で課題に向き合い、
終了後は前向きなご意見を多数いただきました。
このイベントで得られた気づきや発見が、
あらゆるコミュニケーションの壁を
乗り越えていく参考になればと思い、
イベントレポートを公開させていただきます。

爆音コンビニ プロジェクトムービー

爆音について

今回のイベントでは、専門家による指導のもと「体験時間15分以内」「店内BGMの音量100dB未満」の基準に基づき、参加者およびイベントスタッフの健康面への配慮を行いました。
そして、その基準の中で音圧を抑えながらも「話す声が聞こえくい」「店外への音漏れが少ない」などの条件を可能な限り満たす店内BGMを作るため、何度も調整・試験を行うことで「爆音コンビニ」を実現することができたのです。

メディア掲載

このようなイベントを企画した理由のひとつは、新型コロナの影響がほぼすべての人へ降りかかる中、聴覚障害者との接点がない無関心層にも、この問題意識を伝えたいという思いからでした。おかげさまで情報公開した直後から取材依頼をいただき、取材メディアに取り上げていただきました。

2020.12.09
スーパーJチャンネル(テレビ朝日)
“爆音コンビニ”の狙い 伝わらない怖さを体験
2020.12.09
チャント!(CBCテレビ)
1日限定の爆音コンビニ。そのわけは…
2020.12.10
BuzzFeed
「何も聞こえねえええ…!」クラブ並みの大音量が鳴り響く「爆音コンビニ」を体験してきた
2020.12.12
日刊SPA!
世界一うるさい「爆音コンビニ」。誕生の裏には深い背景が
2020.12.21
Nスタ(TBSテレビ)
SDGs 進化するAI音声認識技術が多様な働き方をサポート
2020.12.23
産経新聞
マスクで声が「見えない」現状知って 聴覚障害者支援のNPO
2021.01.12
毎日新聞
「僕たちが生まれる少し前、ひとつの感染症が世界を変えた」
2021.01.21
共同通信(中部経済新聞ほか)
マスク越しでも伝えたい 変わるコミュニケーション「非言語情報」で意思疎通 聴覚障害者に学ぶ
2021.02.08
朝日新聞GLOBE
伝えるには努力も工夫もいる 聴覚障害者はコロナの前から知っていた

CBCテレビ「チャント!」より

EVENT REPORT

それでは、ここからは実際のイベントの様子を
写真とともにレポートしていきます。
まず、イベントの流れとしては
下記のような流れになっていました。

  1. 1.ルール説明
    爆音体験のルール説明、
    注意事項の確認。
  2. 2.爆音体験
    爆音の流れる店内での
    買いものを体験。
  3. 3.振り返り
    爆音体験で感じたことを
    共有し理解を深める。

この中でも、特に「振り返り」の時間は重要で、爆音体験で感じた困ったことや、気づいたことについて、日常的に近い経験を持つ聴覚障害者のスタッフと話すことで、理解し合うことの大切さや、お互いに歩み寄ることの必要性が深く感じられたと思います。

1.説明&導⼊

受付を終えた参加者をお迎えするのは、「DEAF-MART」を運営する会社の社員「神山」(肩書きはエリアマネージャー)。大げさな演技でルールや注意事項を説明しながら、指令の書かれた「MISSION CARD」を参加者に渡し、独特の世界観に引き込みます。

2.爆音体験

爆音が鳴り響く店舗に誘導された参加者は、「MISSION CARD」に書かれたメインミッションとサブミッションを制限時間15分以内にこなさないといけません。
メインミッションは「MISSION CARD」に記載された商品を、条件通りに購入すること。そしてサブミッションは「コピー機の使い方がわからない」や「落とし物が見つからない」といった日常的な困りごとを声が届かない中で解決することでした。

また、参加者が本当に困っている場合、店員に扮した聴覚障害者のスタッフが助けに入り、当事者ならではの解決方法を教えながら対応しました。

3.振り返り

主催であるサイレントボイスのスタッフや聴覚障害者のスタッフと一緒に、爆音体験で感じたことを振り返ります。「困ったこと」「気づいたこと」などを付箋に書き、発表しながらディスカッションを行うことで“気づき”を共有し、理解を深めることができました。

参加者の声

「振り返り」のなかで出た意見や、
アンケートやインタビューでお聞きした話、
参加者によるSNSでの投稿から
印象的だったものをご紹介します。

会社員 20代 男性
音声言語を利用して、コミュニケーションがとれない点に不自由さを感じました。また、欲しいものをあきらめてしまう、ろう者の気持ちも同時に分かりました。
会社員 30代 女性
聴覚障害の方が伝えようと必死なときに、こちらも察しようとすることが大切なのだと感じました。これまで伝える方を頑張ればよいと思っていましたが、コミュニケーションは双方向だということを改めて感じました。
会社員 30代 男性
自分以外の世界を理解するという意味ですごくよいカタチのイベントだと思った。もっと多くの人に体験してもらうべきだと思いました。聴覚障害の方がスタッフとして参加していた事は、振り返りの時まで気がつきませんでした。
会社員 50代 女性
実物がなかったり、抽象的なことはジェスチャーでは伝わりませんでした。写真や文字などいろんなコミュニケーション手段を活用して伝える努力をすると伝わるのだと発見しました。
会社員 20代 女性
時間制限で心に余裕がないとき、店内で困っている人のことを後回しにしてしまいました。振り返りの際、聴覚障害のあるスタッフの方が「わたしたちが普段されていることです」とおっしゃっていて、反省しました。話を聞く側の表情や姿勢が大事だと気づきました。
イベントD 40代 男性
声での意思疎通が全くできない状態での買い物がこんなに大変だとは…。「カラシじゃなくてマスタードが欲しいんだけど表すジェスチャーが思いつかない」とか、普段は気にならないことが大きな壁として立ちはだかることを知りました。

イベントを終えて

コミュニケーションは
一人じゃできない

爆音コンビニの一日の営業を通して、自分の頭の中に生まれたのは「コミュニケーションは共同作業」という言葉でした。自分は今まで話してたんじゃなくて、相手に聞いてもらってたんだということ。自分で全て動かしていたつもりが、相手も半分動かしていたんだということです。逆に相手が半分動かしてくれないだけで、自分はどれだけやりづらくなるのかを、声をかき消す爆音の中、多くの人と一緒に感じることができました。
この爆音コンビニ閉店後の今、自分自身や社会に願うのは、コミュニケーションをあきらめないこと。方法や気持ちを持つこと。誰かがあきらめて手を離したとき、それはコミュニケーションではなくなっていくからです。

主催  
NPO法⼈
Silent Voice 代表/
尾中 友哉

「うるさくて聞こえない」は
誰でもイメージできるはず

最初に頂いた依頼は問題を解決することではなく、その問題自体を身体障害に興味がない人にも知って欲しいということでした。自分もその興味がない人のひとりでしたが、実際に聴覚に障害のある方々のお話を聞いていると、いつもの日常の中に予想外の問題がたくさん存在することに気づくことができ、それを知っているだけでも自然に助けられるように動けるようになったんですね。
そこで今回は、イベントに参加できなくても誰でもイメージできる「うるさすぎて聞こえない」という状況を作ってみました。イヤホンで音楽を聞いてるだけでも、まったく会話ができなくて笑えてきますから、一度試してみてはいかがでしょうか?

企画  
株式会社⼈間
アイデアマン/
山根 シボル

当イベントについての
お問い合わせ

「爆音コンビニ DEAF-MART」は
1日限りのイベントでしたが、
私たちはこれからも聴覚障害についての
問題解決に取り組んで行きます。
お問い合わせ、
相談などありましたら
下記のメールアドレスよりお願いいたします。

[お問い合わせ]
NPO法⼈Silent Voice
sv-contact@silentvoice.co.jp